2005年06月20日

まきおんセンセの「エエもんみっけ」<2-ガタカ>

gataca.jpgガタカ、この映画を取り上げるのはもうちょい先のつもりだったのだが、明日21日深夜にNHKーBSにて放映されるということで、急遽ご紹介。1997年のアメリカ映画。

DNA操作技術の発達により、すぐれた適正を持つモノだけが生まれ、生まれる前から進路が決められている近未来世界。宇宙開発省「ガタカ」に勤めるエリート、ビンセントには人に話すことが出来ない秘密があった。彼は自然出産で生まれた遺伝子上不適正者であり、本来宇宙飛行士には絶対になれないのだ。他人の血液を使って他人になりすまし、宇宙飛行士候補生に選ばれるビンセント。だが、ガタカ内で起きた殺人事件で、彼は疑われてしまう....

この映画、まずその美しい映像に目を奪われる。近未来を舞台にしたSFなんだけど、よくあるメカメカした感じは皆無で、50年代ファッションとアールデコな建築が美しいライティングで描かれる。特にフランク・ロイド・ライトの実在する建築を使って撮影された「ガタカ」のモダンな美しさは必見。印象的な絵がたくさん出てくる美しい映画です。

ストーリーがまたうまい。こういうテーマだと、ついついおもたーい話になってしまいがちだけど、主人公一人が、世の中すべてを相手にアブナイ橋を渡ってだまし通す、という設定は犯罪サスペンスのノリで、重たい状況を飽きさせずに見せてくれる。実はこの監督、この作品の前に「トゥルーマン・ショー」という映画の脚本を担当しており、こちらは「世の中の人全員で、一人をだまし続ける」という全く逆の構造になっていた。この2本の映画はぜひペアで見てほしい。テーマの対比、シリアスとコメディという手法の対比など、単品で見る以上にいろんなことが見えておもしろい。

しかし、生まれる前から適正がわかってしまう世界、こわいよね。そのなかで孤軍奮闘する主人公のひたむきさに心打たれるし、逆に彼に血液などを提供する、事故で半身不随となった男(ジウド・ロウ)もいい。絵の世界も「才能」や「適正」という言葉で語られることが多いだけに、見ながらいろいろと考えさせられる一編です。
posted by まつむらまきお at 18:43| Comment(4) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする